紀尾井町サロンホール主催「木曜コンサート」をより皆様に楽しんでいただくための、インタビューシリーズ。演奏だけではわからない意外な素顔が垣間見えたり、より身近に感じられるようなお話をぜひお楽しみください。5月12日の木曜コンサートにご出演いただく「和醸」の井上雅人さん、澄川武史さん、金子展寛さんにインタビューさせていただきました。(本文中は一部敬称略にて失礼いたします)

クラシックの声楽家である井上雅人さん、横笛の澄川武史さん、箏の金子展寛さんと、皆様が音楽を志すきっかけについて、お話し頂けますか?

井上:変声期が早く、小学校高学年の頃は歌うのがあまり好きではありませんでした。中学校になると皆変声期を迎え始めるので、授業でも普通に歌い出したところ、音楽の先生がとても褒めてくれて。エネルギッシュな名物先生だったのですが、この先生の影響がまず最初のきっかけでした。それからピアノと声楽を習いだし(声楽を始めるタイミングとしては早い方だと思います)、高校生に混ざってコンクールを受け努力賞を取り、そこで父もその道に行くことを少し許してくれた気がします。そして山形北高音楽科を経て、東京芸大に進みました。
澄川:小さい頃に地元島根の郷土芸能石見神楽の笛を吹き始めたのですが、神楽だけでなく様々なジャンルで笛を演奏してみたいなと思うようになったことがきっかけです。実はヴァイオリンや、アルトサックスも演奏していましたが、やはり日本の音楽を学びたいと上京し、邦楽の世界で活動をすることになりました。
金子:小学校3年生終わり頃、その当時流行してました中国楽器演奏グループ「女子十二楽坊」を聴いて伝統楽器の音色にとても興味が湧きました。中国の楽器ですが、特に箏を弾いてみたいと祖母に伝えたところ、叔母が使っていた日本の箏が倉庫にあると聞き、やってみたいと思ったのが一番最初です。そして習い始めて箏を弾くのが楽しく、いつしか将来は「プロの箏奏者になる」と小学校の卒業文集にも書いていました。また偶然にも最初に手ほどきを受けた先生が、二十五絃箏を考案した野坂操壽先生の曾孫弟子ということもあり、箏の面白さや奥深さを肌で感じ、野坂先生の勧めもあり桐朋学園芸術短期大学(以下、桐朋短大)に進みました。

普段ご活躍の場が違う皆様の出会いについて教えて頂けますか?

井上→澄川・金子との出会い
まずは澄川さんとの出会いでした。浜松町にある演奏イベントもしている小料理屋さんで、他の奏者の方が連れてきたのが澄川さんでした。しかし澄川さんとお酒がきっかけで意気投合し、飲み仲間に(笑)それから「ibuki」として少しずつ、ゆるりと活動しよう、ということになりました。そこで共演者として澄川さんが紹介してくださったのが金子さん。なんと同じ誕生日!(歳は違いますが)。ということもあり縁を感じ、色々と共演をお願いするようになりました。

澄川・金子の出会い
金子さんは同じ桐朋短大の出身です。入学前の夏期講習で初めて出会いました。地元で箏を演奏されている方は女性の方ばかりでしたので、金子さんに出会えてとても嬉しかったことを覚えています。入学年次が違ったため、一緒に演奏を始めたのは卒業後になります。

金子→澄川・井上との出合い
澄川さんとは桐朋短大の3年先輩にあたり、澄川さんが2年で卒業されてから入れ替わりで入学しました。しかし、それ以前に僕が高校生の時に桐朋短大の夏期講習でご一緒していたのが澄川さんでした。何をお話したかは全然記憶がないですが、お顔はすごく印象に残っており、こうして月日が経ってからご一緒しているが不思議だと思ってます。そして井上さんは澄川さんから紹介して頂き、SNSを通じてやり取りさせて頂き、また日本酒好きとお誕生日が同じのご縁からご一緒させて頂くようになりました。

お互いの第一印象やご一緒に演奏活動をされるようになってから気づかれたお人柄など教えて頂けますか?

井上さんから澄川さんについて
良い意味でマイペース。しかしこだわりはとても強い人です。日本酒の好みが非常に合い(笑)音楽もお酒も、良き仲間です。

澄川さんから金子さんについて
どんな曲にも真摯に取り組んでくださるので、いつも安心して演奏ができます。
金子さんから井上さんについて
優しいお人柄のイメージがありましたが、音楽に対するお考えなど明瞭で芯のある方だと思いました。そして沢山の日本酒を教えて下さいます(笑)

コンサートのセカンドタイトルにもございます、「邦楽と洋楽が醸し出す和の世界へ」とございますが、音楽の垣根を越えて生まれる皆様の可能性や魅力について、お話し頂けますか?

井上:僕は芸大大学院の修士論文·演奏で原嘉籌子作曲「さんせう大夫」を取り上げ、そこから和楽器との共演や、日本の伝統芸能、作品というものにも興味を持ちました。声楽を生業とし、かつ日本人であることが活かせるもの。そういうものを今後も、オペラなどのクラシック音楽を軸としつつ、行っていきたいと思っています。

澄川:これまで学んできた日本の伝統音楽を大切にしつつ、あれとこれを組み合わせたらどんな音楽になるんだろう?と考えるとわくわくします。ジャンルだけではなく、演者それぞれの感性や人柄も活かした音楽作りをしていきたいと思います。

金子:子供のときは基礎で古典作品も弾いてましたが、流行りの曲を箏でアレンジして弾いたり、ピアノの上手な子に伴奏してもらったりして弾いてました。桐朋短大ではアウトリーチや邦楽アンサンブルの授業で五線譜で書かれた作品を取り上げるにあたり洋楽の人たちとの交流もあり、垣根を超えて一緒に音楽をする楽しさや喜びを感じてました。箏でやれる表現を模索することは楽しい作業です。そして長い歴史の中で古典作品の洗練された無駄のない音の運び、手の動きも箏を演奏する上でとても大事です。古典でのベースもあり箏っていろんな楽器と対話ができる事を目標にできたらと思ってます。

音楽やプライベートなどでも、今後チャレンジされたいことなどございますか?

井上:和と洋の作品。限りある人生の中で、できるものもまた限りはあると思います。できる機会がある限り、チャレンジし続けていきたいと思います。

澄川:今年は30歳という節目の年。これまで出会ったすべての方々や場所により一層感謝を込めて演奏をしたいと思います。

金子:箏は一音一絃で制約のある楽器ですが、爪の当て方で色んな音色が出せる楽器です。また楽器一面一面に個性があり音色が違います。その道具たちと心を一つにして等身大の自分が今現在出せる最高の一音を出せるようにしたいです。そして色んなジャンルの音楽と共演してみたいです。

最後に今回のコンサートを心待ちにされていらっしゃるお客様に、メッセージをお願い致します。

井上:今回は澄川さんが「和醸」という素晴らしい名前をつけてくれました。良い公演となるよう、精一杯取り組みたいと思います。

澄川:3人で表現する和の心を感じとって頂ければ幸いです。

金子:男性のみのグループというのも珍しいと思います。力強く、時には繊細で優しい音を出して、色々挑戦できたらと思います。

コンサート情報

アーク紀尾井町サロンホール主催シリーズ 木曜コンサート
和醸

2022年5月12日(木)
開場18:00 開演18:30

チケット料金 4,000円
チケット受付 紀尾井町サロンホールオンラインショップ
チケット再受付開始 2022年3月12日 AM9:00

本チケットは会場現金精算型の販売形式となります。本オンラインショップではご予約のみの受付となり、コンサート当日にホール受付での現金精算後ご入場となります。

本公演はチケットレスとなっております。当日受付にてご購入がわかるメールのプリント、メール受信画面をご提示ください。万が一、確認がとれるものをお忘れの際は、お名前がわかる身分証明書等を当方のリストと照らし合わせをさせていただきます。身分証明書のご提示がない場合はご入館できない場合もございますので、お気を付けくださいませ。

出演者名
バリトン 井上雅人
横笛 澄川武史
箏 金子展寛

プログラム
瀧廉太郎 荒城の月
バッハ=グノー アヴェ・マリア
早坂文雄 春夫の詩に拠る四つの無伴奏歌曲 より「うぐひす」
長澤勝俊 萌春
伊福部昭 物云舞

■プロフィール
澄川武史 横笛
島根県益田市出身。島根県西部に古くから伝わる郷土芸能「石見神楽」をルーツに持つ横笛奏者。 桐朋学園芸術短期大学日本音楽専修卒業。東京藝術大学別科邦楽囃子(笛) 修了。 笛を中川善雄、西川浩平の両師に師事。 邦楽演奏会、舞踊会のほか、春風亭昇吉落語会での演奏。京都上賀茂神社にて宮本亞門演出 の奉納劇「降臨」に出演。メディア関連では、NHK大河ドラマ「青天を衝け」、「軍師官兵衛」に出演。映画「若おかみは小学生!」劇中音楽の演奏。また、石川さゆり、林原めぐみ、他アーティストのアルバムレコーディング に参加。他ジャンルとの共演も積極的に行っている。アンサンブル室町メンバー。

金子展寛 箏
9歳より生田流箏曲をはじめる。第22回賢順記念くるめ全国箏曲祭全国箏曲コンクールにおいて銀賞受賞。その他受賞多数。2018年、第一回リサイタル開催。2019年、十二月大歌舞伎にて二十五絃箏を演奏。桐朋短大専攻科日本音楽専修卒業。現在箏、三絃、二十五絃箏を野坂惠璃氏に師事。箏を通じてソロでの活動や、邦楽器との共演はもちろん、洋楽器やアジアの音楽との共演、舞台やCDのレコーディング、アレンジなど隔たりない幅広いフィールドで活動を展開し、多くの方に箏の魅力を知ってもらえるよう活動をしている。

井上雅人 バリトン
山形県新庄市出身。東京藝大卒業、同大学院修了。二期会オペラ研修所を最優秀で修了(川崎静子賞)。「フィガロの結婚」「椿姫」「マクベス」などで主要な役を務める他、團伊玖磨「夕鶴」(惣ど)、三木稔「春琴抄」抜粋(佐助)、三木稔「じょうるり」(阿波抄掾)、三善晃「遠い帆」(徳川家康)等邦人のオペラ作品にも出演。NHK交響楽団「サロメ」、上海交響楽団「サロメ」(デュトワ指揮)、新日本フィルハーモニー交響楽団「エスタンシア」(アルフテル指揮)などにソリストとして出演。2010年上海万博「第九」バリトンソロ。二期会会員。