紀尾井町サロンホール主催「木曜コンサート」をより皆様に楽しんでいただくための、インタビューシリーズ。演奏だけではわからない意外な素顔が垣間見えたり、より身近に感じられるようなお話をぜひお楽しみください。4月14日の木曜コンサートにご出演いただくTrio Gokokujiのみなさんにインタビューさせていただきました。(本文中は一部敬称略にて失礼いたします)

このたびのコンサートはTrio Gokokuji結成記念コンサートと伺いました。ソリストとして活躍されていらっしゃる若手精鋭の皆様が結集され、とても印象的なネーミングですが、トリオ結成のいきさつを教えて頂けますか?

関:しばらく弦楽四重奏に打ち込んでいましたが、最近は活動を休止しているので、この時間がある時に名曲が沢山あるピアノトリオもしっかりと勉強したいという気持ちから、高校の同級生に声をかけたのが始まりです。実は人生で初めて取り組んだ室内楽は小学3年生の時に演奏したピアノトリオで、それ以降ピアノトリオを本格的に勉強したい気持ちがずっとありました。高校ではピアノと弦楽器では授業が違いますし、このトリオのメンバーだけで出かけるということはほぼ無かったのですが、唯一学校帰りに、高校の最寄り駅名でもある護国寺に行ってみようという話になり、その時がたまたまこのメンバーでした。唯一3人で訪れた場所、そして3人が初めて出会った地でもある護国寺にちなんでTrio Gokokujiと名付けました。

原:僕は他の2人のメンバーとは違う大学に進んだこともあり、時々食事をすることくらいでしか会う機会がなかったため、こうして高校の同級生と何か演奏会ができたらいいなと常に考えていました。そして今回このように「Trio Gokokuji」という団体として結成できたこと、そして演奏会が実現したこと、大変嬉しく思っています。同じクラスで3年間ともに高校生活を送ったメンバーではありますが、3人で演奏した機会が実はこれまで一度もなく、大学を卒業したタイミングで色々と時間も増えてと、結成する機会はある意味結構タイミングが合った瞬間だったような気もします。

メンバーの皆様だからこそご存知な、皆様それぞれのお人柄など、ご紹介頂けますか?

佐川様について

関:彼とは同じテンション感を共有できるなと思っています。例えばどこかに一緒に遊びに出かけたとして、最初から最後までお互い夢中で楽しむことができます。それは彼の天真爛漫でポジティブなキャラクターに惹きつけられるからかもしれません。とても周りに影響を与える存在です。そして努力家でもある彼からは音楽家としても刺激をもらっています。

原:普段からとても心の温かい人だなと思います。音楽的な部分でもとても多彩で、僕の引き出しにはない表現や音の出し方など、一緒に弾いていてとても刺激的です。そしてなんといっても彼はとても純粋に音楽に向き合っていて、持ち前の明るさや元気な部分などがそのまま演奏から聴こえてくるような気がして、音楽家として僕もそうありたいなと羨ましく思ったりすることもあります。

関様について

佐川:朋岳とはデュオのパートナーとしてもこれまで一緒に弾いてきました。演奏以外にも食事に行ったり遊んだりしますが、普段は穏やかでおおらかな彼が音楽を共にする時間になると強いこだわりと説得力のあるアドバイスを伝えてくれます。一緒に演奏すると自分自身もとても勉強になるし何より音色のボキャブラリーが多い事に感激します。

原:とてもユニークで自由な人だなと思います。かと思いきや、音楽の中での微細な部分には妥協を一切許さず、常にどうすれば良くなるか熟考して、表現方法を考える姿は凄くギャップがあると思います。アプローチの仕方も独特だったりして、一緒に演奏していて常に新鮮です。同じ弦楽器奏者としてもとても尊敬していて、彼の技術はもちろん、表現など少しでも盗めたらと日々奮闘しています(笑)

原様について

佐川:普段の会話でもふとした時に笑わせてくれ、場の雰囲気を明るくさせてくれる面白い人です。納得するまで音を追求する姿にいつも感銘を受けています。どう表現したいかを言葉にしてイメージを膨らませられるのは彼の強みだと思います。パッション溢れる彼のチェロは私たちに欠かせない存在です。

関:高校1年生から3年間ずっと彼と室内楽を組んでいましたし、信頼があります。朝練をよくしていたのですが、朝7時半に学校に行き、夜は9時半頃学校から帰る時まで一緒に過ごしていました。なので、高校生の間だけで言えば毎日家族よりも過ごす時間が長かったので、特別な存在です。彼の特徴は歌を本格的に歌っていることです。彼の合唱の演奏会を何度も楽しみました。今はチェロがメインですが、チェロを弾く時も合唱の時のような歌心を生涯ずっと表現していてほしいなと思っています。

普段はソリストとして別々の活動をされていらっしゃる皆様が、Trio Gokokujiとして集まられた時に生まれる音楽にはどんな期待がございますか?

佐川:私は室内楽の経験が多くなくトリオでの演奏は初めてで、やはり1人で演奏をする時よりも耳に神経を使います。打鍵の仕方や音のバランスも試行錯誤の日々ですが、ソロはもちろん室内楽でも多方面で活躍している2人と意見交換しながらそれぞれの楽器が1つの大きな楽器となり作品を奏でられるよう努力しています。付属からの友人と一緒に演奏出来る事が素直に嬉しいし楽しいです。

関:室内楽ではパートナーの演奏だけでなく、人としての性格やそこから音楽に現れるキャラクターを理解して、寄り添い尊重する事が大切だと私は思っています。ですので、同級生であり、8年という長い付き合いを経て相手の個性をすでにある程度理解できているという点は私達の強みになるのではと思います。これはただ長い付き合いというのとは違います。親友として腹を割って話してきているというところです。だからこそ、それぞれの個性を最大限に活かした結束力のある演奏ができる可能性があると私は信じています。合わせをする時は良い意味で皆躊躇がないと思います。相手の顔を伺うようなことなく素直にやりたい事を言い合える環境が最初から自然とできているのは非常に価値のあることです。

原:ピアノトリオという編成は、3人のソリストが集まって生まれるいわゆる「寄せ集め」みたいなものだと考える方が多いように思います。それもとても面白いと思いますが、私たちはお互いの持つ音楽観を尊重し合い、3人で同じ方向で高め合えるような音楽ができたら良いなと思います。まだ始まったばかりで、3人ともまだ手探りではありますが、日々勉強しながら色々な事を追求していきたいです。

それぞれご自身の中で大切にされていらっしゃる楽曲、ご自身に影響を与えられたと思われるような楽曲がございましたら、エピソードと合わせて教えて頂けますか?

佐川:結成記念コンサートに向けて全ての曲を初めて勉強したのでどれも大切なレパートリーとなりました。その中でも特にK.M.Murphyの作品は演奏機会が少なくあまり知られていないと思いますが、一音目から聴く人を惹き付ける躍動感がありリズミカルな曲で私たち3人のキャラにも合っているだろうという事で選曲しました。初めて聴くと一見複雑に感じますが、3人の掛け合いに注目して欲しいです。

関:コンサートではドビュッシーのピアノトリオを演奏する予定ですが、この作品は18歳の時に作られた作品だと知られています。同じ年頃の私たちが作曲者の気持ちに寄り添って演奏できるのは、今だけだと思い、私はすぐにでも機会が有れば演奏したいと思っていた曲です。それからベートーヴェンのトリオは、私が小学3年生の時に初めて室内楽にトライした時の作品です。室内楽に興味を持つきっかけとなった作品なので、人生を大きく変えた作品とも言える大切な曲です。

原:僕は付属高校に入学するため上京し、周りには楽器の上手な同級生たちがたくさんいて、それは自分にとって本当に刺激に満ち溢れたものでした。その時に同じクラスになった佐川くんや関くんとも出会い、そこで関くんから誘っていただいた初めての室内楽の授業で勉強したベートーヴェンのピアノトリオは今でも印象に残っています。メンバーはこのメンバーではありませんでしたが、何もかもが初めての経験で、今こうして室内楽を魅力に感じ、これからも勉強していきたいと思う原動力にもなっていると思います。

今後Trio Gokokujiとして、又は個人としてチャレンジされたいことはございますか?

佐川:今回の演奏会をきっかけに様々な場所で演奏活動ができればと考えています。私はこの先もソロの演奏が軸になるとは思いますが、だからこそGokokujiトリオとして3人が集まった時は音楽作りを大切にしたいと思いますしレパートリーも幅広く増やしていきたいと考えています。

関:とにかく今は沢山の名曲を、素晴らしい先生方のもとでしっかりと勉強したいという気持ちが強いです。弦楽四重奏を勉強するときも海外の先生方からアドバイスをいただくととても新鮮な観点で曲に向き合うことができるようになった経験があるので、トリオでも同じような勉強がこれからできたらなと考えております。

原:恒常のピアノ三重奏団として、これからも演奏活動していけたらと思っています。そして何より僕自身ピアノトリオの作品は好きな曲がとても多いので、この気持ちを大切に3人で色々な曲を勉強し、たくさん演奏したいという気持ちでいっぱいです!
僕個人としてはピアノトリオのみならず、ソロや弦楽四重奏、オーケストラなどたくさんの作品に触れて、音楽的な素養をもっと高めていきたいです。

最後に皆様のコンサートを心待ちにされていらっしゃるお客様へ、当日のプログラムから、見どころなど教えて頂けますか?

佐川:ピアノを勉強している人はモーツァルトやベートーヴェンのソナタや協奏曲のほとんどは耳にした事があると思うし少し聴けばあの曲だ、と分かると思いますが、トリオの曲は聴く機会があまり無いと思います。ですが今日演奏する曲を含め、素晴らしい作品がまだまだあるんだよという事を知っていただきたいですし、他のトリオの作品も聴きたい!と興味を持っていただけるきっかけになれば嬉しいです。モーツァルトは6曲、ベートーヴェンは7曲も作曲しています。

原:ピアノトリオとして演奏会に足をお運びいただけるのはもちろんとても嬉しいことなのですが、高校生活の3年間を共にし、4年間それぞれの大学生活を経て学び成長した僕たちがこのタイミングで集まって演奏をする瞬間の尊さ、3人の間で生まれる空気感など、作品の魅力だけでなく、「Trio Gokokuji」という団体の魅力にもたっぷり味わっていただけたらと思います。

コンサート情報

アーク紀尾井町サロンホール主催シリーズ木曜コンサート
Trio Gokokuji 結成記念リサイタル
〜Give Me Phoenix Wings To Fly〜

佐川和冴(ピアノ)
関朋岳(ヴァイオリン)
原宗史(チェロ)

演奏曲目
・Mozart : Piano Trio K.502 B dur
・Beethoven : Piano Trio No.1 Op.1-1 Es dur 他

2022/04/14 木曜日
開場18:15 開演19:00

チケット 2,000円
チケットご予約 紀尾井町サロンホールオンラインショップ

本チケットは会場現金精算型の販売形式となります。本オンラインショップではご予約のみの受付となり、コンサート当日にホール受付での現金精算後のご入場となります。

本公演はチケットレスとなっております。当日受付にてご購入がわかるメールのプリント、メール受信画面をご提示ください。万が一、確認がとれるものをお忘れの際は、お名前がわかる身分証明書等を当方のリストと照らし合わせをさせていただきます。身分証明書のご提示がない場合はご入館できない場合もございますので、お気を付けくださいませ。

佐川 和冴
東京音楽大学を首席で卒業し、現在東京音楽大学大学院修士課程に奨学生として在学中。第90回日本音楽コンクールピアノ部門第2位。第15回東京音楽大学コンクールにおいて史上最年少で第1位。第31回宝塚ベガ音楽コンクール第1位。2018年第39回霧島国際音楽祭賞を受賞。2020年度東京音楽大学短期留学奨学生としてモスクワ音楽院(ロシア)に留学。現在、石井克典、野島稔、仲田みずほの各氏に師事。

関 朋岳
第16回東京音楽コンクール弦楽部門第1位。これまでに日フィル、シティフィル、東フィル、東響等と共演。国内主要オーケストラにゲストコンサートマスターとして度々招かれている。現在、東京音楽大学アーティストディプロマコースに特別特待奨学生として在学中。NHK交響楽団アカデミー生修了。現在、原田幸一郎、神尾真由子の各氏に師事。使用楽器は(株)日本ヴァイオリンから特別貸与されているFrancesco Gobetti。

原 宗史
2019年、愛知県豊田市で行われた第1回P-NEXTチェロコンクールにおいて準グランプリおよび豊田市教育委員会賞、豊田市文化振興財団賞を受賞。第25回みえ音楽コンクール弦楽部門第1位および、三重県知事賞を受賞。これまでにチェロを松波恵子、上森祥平、花崎薫、中木健二の各氏に師事。第45回「藝大室内楽定期」に出演。東京藝術大学音楽学部器楽科を経て、同大学大学院音楽研究科修士課程に在籍。