桃の節句に開催する〈よしなしうたのよる〉。歌手の鈴木絵麻さんはナチュラルでクリアな歌声と美しい手話、ときにはリコーダーで奏でる独創的な音楽世界で多くのファンを魅了しています。徳永真一郎さんは、フランス留学後、優れた技術と深い陰影に富んだ叙情的な演奏に評価が高い若手ギタリストのホープです。お二人のユニットが生まれたきっかけ、今回のデュオコンサートの〈素敵なたくらみ〉などについてお訊きしました。(本文中は一部敬称略にて失礼いたします)
お知らせ 2022年2月22日
2022年3月3日予定しておりましたアーク紀尾井町サロンホール主催シリーズ木曜コンサート「よしなしうたのよる」は、現在の新型コロナ感染状況拡大を鑑み、2022年7月7日に延期させて頂くこととなりました。なお、紀尾井町サロンホールオンラインショップで3月3日「よしなしうたのよる」のチケットをご購入いただいているお客様は、そのまま新しい開催日でチケットは有効となりますので、新たにお申込みいただかなくとも大丈夫でございます。どうぞ、ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。
昨年4月の近江楽堂のお二人が組まれたコンサートに伺わせていただきました。鈴木さんの澄んだ歌声、朗読、手話、リコーダーで展開する自由で開放された演奏がとても魅力的で世界に引き込まれました。そして、徳永さんのギターが歌の伴奏としての楽器としてだけではなく、楽曲が持つ世界を作り出していて、それぞれが持つ個性が同等にしっかり際立って聴く側に届いていると感じました。お二人がユニットを組まれたきっかけを教えてください。
近江楽堂公演
鈴木:私からアプローチしました。ずっと以前から「ギターと歌いたい」と漠然と思っていたのですが、数年前、ジョン・ダウランドの歌曲に取り組むようになってから、その思いがはっきりした願いに変わりました。ちょうどその頃、フランスから帰国して間もない真一郎さんの演奏を聴いた私の師匠や知人の演奏家の方々が、「きっと合うと思う」とおっしゃってくださって、取り急ぎYouTube等に上がっている真一郎さんの演奏をいくつも聴きました。きらきらと美しいのに飾らない音、静かで芯のある佇まい…等々に心を打たれ、ぜひ共演してほしい!と、師匠と知人を介して連絡をさせてもらいました。初めて音を合わせた時の、まるで一緒に歌ってくれているかのような特別な感覚を、とてもよくおぼえています。
徳永:知り合ったきっかけは知り合いの演奏家からの紹介でした。絵麻さんとはその後メールでやりとりをし、どんなことをやってみたいかを話しながら一回目の演奏会の内容を考えました。ご提案いただいたレパートリーの中にダウランドや武満徹作品がありました。すごく好きな曲ばかりで一度やってみたいと思っていましたし、武満作品についてはアレンジもやりがいがありました。
鈴木さんが歌われる言葉、手話のみならず〈日本語〉、日本語以外の言語でも表現する際に特別な想いを感じるのですが、心がけていることはありますか。
鈴木:これまでにも同様のご感想を頂戴したことはあるのですが、私自身はできるだけ「無でありたい」と、いつも思っています。詩・言葉と音楽とが出会って生まれた世界、私の声はそれを表す一つの色であればよいのであって、歌えば自然と楽曲に導かれていく…それが理想です。そのためにはとにかく、声と技術を磨きつづけなければ!と思います。
一方、手話をしながら歌うときは、少し独特な感覚があります。例えば、歌詞に「雨」とあればどんな風に降っているのか、また「悲しみ」はどれほどの深さなのか…等々、一語一語、より具体的に思い描きながら手話を組み立てていくのですが、それが歌うときに表に出てくるのか、「知っていた曲なのに、改めて、こんなことを歌っていたのかと驚いた」と言っていただくことも多いです。
Photo Masahiko Nakagawa
徳永さんは鈴木さんとデュオをなさる際にギタリストとして大事になさっていることはありますか?
徳永:アンサンブルの上で気をつけることは呼吸や響きのバランスなど基本的なことです。加えて、絵麻さんの透明感のある声がより際立つようにギターの音色選びを考えながら弾いています。
今回の公演名〈よしなしうたのよる〉はちょっと不思議なタイトル。なにか素敵なたくらみがあるのでしょうか? どのようなコンサートになるのか教えてください。
鈴木:大好きな詩人、谷川俊太郎さんの詩集のタイトル「よしなしうた」から頂いて付けました。この詩集の初版本の帯には、- おとずれぬねむりをまつ おとなしい おとなのための おとぎうた -とあります。3月3日、雛祭りの「よる」には、なんだか不思議なことが起こりそうな気がしませんか。谷川俊太郎さんと谷川賢作さんによる作品はとにかく楽しい! 今回もいろいろ演奏します。
徳永:前半が英語、後半が日本語の歌です。武満作品、谷川作品、それぞれ素晴らしい歌詞の中に、日本語の美しさや面白さが詰まった選曲になっています。
Photo Waki Hamatsu
少し音楽から離れますが、お二人は演奏活動以外にはどのようなことをしてお過ごしになっていますか? ご趣味などあったら教えてください。
鈴木:空や雲をぼーっと眺めるのが至福の時。ふらりと旅に出て知らない町を歩き、土地の銘酒やおいしいものを頂くのもとても幸せ。洋服や雑貨探しもわくわくの時間です。そして一緒に暮らす猫、クックに魂を捧げる日々です。
徳永:サッカー観戦、野球観戦、釣り、食べ歩き。
最後にお二人それぞれの今後のご活動について教えてください。またこれからトライしてみたいことなどはありますか?
鈴木:近い将来、このデュオの演奏を録音したいと考えています。そして私たちならではの音楽世界をたくさんの方に楽しんで頂けたら、とても幸せです。
徳永:ダウランドの作品をより掘り下げて勉強したいです。また、この編成のために日本語の歌もオリジナルのアレンジを増やしていきたいです。
*徳永真一郎 コンサート予定 :
2/28 京都北山マチネシリーズ(中ヒデヒト Cl. 徳永真一郎 Gt.) 京都コンサートホール
4/09 デュオギターリサイタル (共演 : 岡本拓也) 加賀町ホール
6/3,10 ソプラノとギターのデュオリサイタル (福田美樹子 Sop. 徳永真一郎 Gt.) 五反田文化センター音楽ホール
動画
コンサート情報
アーク紀尾井町サロンホール主催シリーズ 木曜コンサート
「よしなしうたのよる」
2022年3月3日(木曜日) 19:00開演
本公演は2022年7月7日に変更となりました
前売一般 4,500円
高校生以下 2,000円
*高校生以下の方はご入館時に受付で学生証の提示が必要です
<チケット発売日>
2021年11月24日
銀行振込でのご購入 ダウランド アンド カンパニイ TEL042-390-6430
https://dowland.info/
クレジットカードでのご購入 紀尾井町サロンホールオンラインショップ
https://kioichosalonhall.com/shop/
<出演>
鈴木絵麻 歌
徳永真一郎 ギター
<PROGRAM>
●谷川俊太郎&谷川賢作ソングブックより
はくしゃくふじん/猫を見る/猫に見られる/よるのようちえん
●ジョン・ダウランドの歌曲より
流れよわが涙/悲しみよとどまれ/いまこそ惜別の時
●武満徹SONGSより
明日ハ晴レカナ、曇リカナ/死んだ男の残したものは
●イギリス民謡/カタルーニャ民謡
サリー・ガーデン/仔羊をさがしに/聖母の御子
●ガスパール・カサド(ギターソロ)
レオナルドの歌/カタルーニャ伝説
<プロフィール>
鈴木絵麻 歌
日本語の歌、ヨーロッパの古謡など多くの人に親しみのある歌をレパートリーとして、2009年から多彩なコンサート活動を続け、清新な声の魅力と独特の表現力で好評を得る。自らの詩によるオリジナル曲「あめのいとをつむいで」「月」「夢のそばで」も発表。近年はシェイクスピアの時代の歌曲にも取り組む。 2020年、東京都の芸術文化支援プロジェクト「アートにエールを!」参加動画《瑠璃色の地球/ありがとう~歌と手話の世界》が話題となる。現在、国内随一の実力と評される TOKYO FM 少年合唱団のマネジメントおよび歌と手話のレッスンを手掛けている。声楽を波多野睦美、歌唱表現を佐藤宏、手話を石井弘恵の各氏に師事。
徳永真一郎 ギター
徳島県出身。9歳からギターを学び、国内コンクールで入賞を重ねた後、2007年渡仏。ストラスブール地方音楽院を経て2011年よりパリ国立高等音楽院にて研鑽を積む。2016年同音楽院修士課程を満場一致の首席で卒業。ギターを川竹道夫、アレクシス・ムズラキス、ローラン・ディアンス、ジュディカエル・ペロワ各氏に、古楽・リュートを今村泰典氏に師事。2008年ナクソス国際ギターコンクール 第3位、2010年オルシュティン国際ギターコンクール第1 位及びグランプリ。2018年ヴェリア国際ギターコンクールのコンチェルト部門にて第2位入賞。カレンツァーナ音楽祭、パリギターフェスティバルなどに招待されている。2018年マイスターミュージックよりデビューアルバム『テリュール』をリリースし、平成30年文化庁芸術祭優秀賞を受賞。
<主催>
アーク証券株式会社・紀尾井町サロンホール運営事務局(株式会社ミリウテラス)
<協力・お問い合わせ>
ダウランド アンド カンパニイ TEL042-390-6430
https://dowland.info/
photo : Waki Hamatsu
design : Keiko Tsunoda