紀尾井町サロンホール主催「木曜コンサート」をより皆様に楽しんでいただくための、インタビューシリーズ。演奏だけではわからない意外な素顔が垣間見えたり、より身近に感じられるようなお話をぜひお楽しみください。10月14日の木曜コンサートは、ピアソラ生誕100年のを祝したオールピアソラプログラムをバリトンサックス奏者浅利真さんとともに若き演奏家たちでお届けいたします。バリトンサックスの浅利さんと、ソプラノサックスの北井さんをお招きしてインタビューさせていただきました(本文中は一部敬称略にて失礼いたします)。

サクソフォンをはじめられたきっかけについて、お聞かせ頂けますか?

浅利: 私は北海道稚内市出身で夏は野球、冬はスキーをするみたいな環境で育ちました。中学に入った時も当然野球部に入ろうと思って見学に行ったのですが、その時の部員を見て「みんな、こんなに筋肉隆々で身体が大きくて、球も早い!…ちょっと自分には無理かも」とひるんでしまいまして、その時本当にたまたま覗いた吹奏楽部でサックスという楽器を初めて見まして「かっこいいな、やってみようかな。」と思って、吹奏楽部に入ったのが、サックスを始めたきっかけとなります。

サクソフォンを始められて、すぐに夢中になられたという感じでしょうか?。

浅利: 吹奏楽部に入って「はい、君はこの楽器。」と渡されたのがバリトンサックスで、まず、それで練習を始めてみたのですが、実はちょっとつまらなかったです(笑)今だったら、その楽器の面白さはすごく分かりますが、中学1年の自分には、演奏も全音符だけであったり、リズムがあっても影の役割というか、そういうのがつまらなくて、中学校でいったんやめて違うことをしようと。で、高校に入りましたが、でも先輩に吹奏楽部に連れていかれて「いいから入れ。」と。とりあえず入りましたが、やっぱり、あまり面白くなくて、違うことがしたいと思っていました。高校の選択授業では音楽を選ばず、美術を選択して油絵やデッサンを描いたりしていました。

 でも、高校1年の時に吹奏楽部がいい成績を取って、すごくみんなが楽しんでいるところを見た時に、「この道を続けたい」というよりは、「こういうことを導く人がいいな」と思いました。当時は真面目に練習もしていなかったので、プレイヤーになるとは考えられませんでしたけれど、ひとつのものを作り上げていくような、指導する立場ならなれるかもと思い、それが音大を目指すきっかけになりました。また、たまたま同じ学年で音大を目指す人が4人もいたという事も大きかったかと。自分一人だけなら、なかなか音大に行くとか、そういう発想にもならなかったのではと思います。

ご自身の演奏活動とは別に後進の皆様や吹奏楽部のご指導なども精力的にされていらっしゃるとお聞きしております。学生の皆さんをご指導するなかで、大切にされていらっしゃることなどお聞かせ頂けますか?

浅利: 吹奏楽を指導される方って大勢いらっしゃるのですが、そんな中で自分が出来ることって何かなと思った時、自分が実際の演奏活動を通じて得た、ルールのように「絶対にこうしなきゃいけないこと。」とか、「ここまでやらなければ人は満足しないよ。」というようなことを、遊びでやっているような子供達にも見せて、導ければいいかなと思っています。

 音楽をやるだけではなく、実際の人間関係の作り方や何かに属した時の責任感とか、吹奏楽ってそういった事を教えるのに、とても適しているんです。例えば中学、高校ならそれぞれ3年間、その中で大所帯の組織が出来上がってきます。部長、副部長がいて、幹部やその他に係がいて、演奏や、練習するだけではなく、セッティングしたり、準備をしたりと、こまごまなことがあって、これって小さな会社みたいだな、と。そういったところで、ある意味社会経験というか、実践的な経験を子供達が知らないうちに出来たり、時おり起きる問題も子供達に教えるチャンスであったりと思っています。たいていが、物を知らなかったり、想像が及ばなかったりということで起きるので、そういったことに子供達が気付いたり、成長するきっかけとなってくれればと思っています。

浅利さんはソロでの演奏活動のほか、サクソフォンカルテット「ヴィーヴ」や8重奏団「ヴォンゴレーズ」などでもご活躍されていらっしゃいますが、今回のコンサートでは、若手のサクソフォン奏者の皆様とのカルテットでご出演を頂けると伺いました。本日はメンバーのお一人の北井さんもおみえですが、今回はどういったメンバーの皆様との公演となりますか?

浅利: では、メンバーを集めてくれた北井くんに話して頂けたらと思います。

北井: ピアソラ生誕100周年というメモリアルイヤーにふさわしいコンサートをとお話しを頂きました時に、浅利先生しかいらっしゃらないと、まず思いました。先生のピアソラへの深い知識や、その演奏を自分自身も追いながら、ここ数年サックスを吹いていると感じています。今回先生にもご快諾を頂き、先生のもとで勉強されていた本間美桜さん、また「ヴィーヴ」のメンバーでもある鶴飼先生のお弟子さんの平井千紘さん、平井さんは僕の高校の先輩にあたるというご縁もあり、メンバーを組ませて頂きました。

今回はオールピアソラプログラムとなりますが、浅利さんのピアソラの楽曲に対しての想いや、その魅力をお聞かせ頂けますか?

浅利: 音を聞いてピアソラとサックスはすごく合うなってわかって、やりたいなと思ったのが、ちょうど自分達が頑張って活動していこうという頃でした。ただ、私が始める前から、サックスカルテットやピアノとの演奏などもあり、同じことをやっては二番煎じになるので、まずレパートリー開拓をしました。海外のピアソラをトリビュートしたCDを聞いたり、まだ誰もやっていない曲をやってみようと、その当時830円だったライブCDの中に天使シリーズと呼んでいる「天使のミロンガ」をピアソラ本人の演奏を聴いて「これだ!やってみたい!」と血が騒いだというのが一番最初だったと思います。ただ、やればやるほど面白くて、まず「タンゴとは何だろう?」というところから始まりました。割とタンゴのことをあまり知らないでピアソラをやってしまうということもよくあるのですけれど、タンゴの先にピアソラがあるって、ここからやるとよく分からなくなるんですね。ただ「情熱的だとか、かっこいい。」みたいな感じで終わってしまうんですけれど、古典のタンゴをたくさん聞いてみると「これをデフォルメしたのがピアソラなんだ」ということが見えてきて、「じゃあこっちも勉強してみよう。」と。

 一番すごいのはリズム感と歌い方ですね。タンゴ奏者はすごく単純な楽譜を、それを見てどれだけ自由に演奏するかを競い合うみたいなところがあって、なるほど、だからこれだけ色んな演奏が面白いんだと思って、それを自分達が演奏しようという時に、本当のメロディは4分音符2分音符4分音符ばっかりみたいなんですけれど、演奏は32分音符のすさまじいリズムだったりして「これは一回楽譜におこした方がいいな」と思いました。自分達の演奏は私がアレンジして楽譜に書きおこしているのですが、楽譜にしていくうちに、さらに見えてくるものがあって、やればやるほど面白くて、結局その人の癖とか内面を探る、そういう時間だったのかなと思うんです。こういった一人の作曲家にフォーカスしてやっていくこと自体がすごく面白くて、気づけばずっとやっているって感じです。コンサートでも大体最後はピアソラを演奏していますが、お客様もとても喜んでくださいます。

北井さんは浅利先生のお弟子さんでもありますけれど、浅利先生はどんな先生でいらっしゃいますか?

北井: 僕が初めて先生にお会いしたのは中学2年生くらいの時、武蔵野音大の体験レッスンでしたが、音楽室の後ろのホワイトボードくらい背が高い先生が、サックスを持っていらしたのを見て「ちょっと怖いな」というのが第一印象でした。でも、話してみるととても話しやすい先生で、最初の印象はすぐに変わりました。レッスンの時には感覚だけではなく、裏付けされる根拠だとか、なぜそうなっているのかなどを先生が説明してくださるのが、すごく楽しかったです。先生の演奏は心に刺さるし、ご指導も適格に教えてくださると感じています。プライベートでは調理師免許も持っていらっしゃるほどのお料理上手であることもお伝えしておきます(笑)

最後に今回のコンサートを心待ちにされていらっしゃるお客様へメッセージをそれぞれお二人にお願いいたします。

浅利: サックスとピアノによるピアソラの音楽というのは、おそらく斬新な響きになるのではと思っています。この素敵なホールで、どんな響きになるか、自分自身も楽しみですし、おそらく、すごい音の波が来るのではと想像しています。今回演奏する曲目は、すごく聞き馴染みの良いものから、先ほどお話した「天使シリーズ」とピアソラの色々な顔をお見せできるかと思います。そんなピアソラの音楽の楽しさを、どの一瞬でもお客様に伝えられたらと演奏いたしますので、そのあたりを楽しみにして頂けたらと思っています。

北井: タンゴ、ピアソラと、まだまだ勉強している身ではありますが、愛してやまないサックスという楽器で、素敵なメンバーと一緒に気持ちを込めて演奏したいと思っています。ぜひ楽しみにお越し頂けましたらと思います!

本日は貴重なお話しをありがとうございました。浅利さんのピアソラへの造詣の深さを知り、ご指導のもとに結集した若手のメンバーを交えたカルテットが、どんなピアソラの響きになるのか、今からとても楽しみにしております。

コンサート情報

アーク紀尾井町サロンホール主催シリーズ 木曜コンサート
タンゴの夜に ~ピアソラ生誕100年を祝して~

10月14日 木曜日
開場 18:30 開演 19:00

出演
Baritone sax 浅利 真
北海道出身。武蔵野音楽大学卒業。サクソフォンを須田寔、松沢増保、浜康幸、杉本孝幸の諸氏に師事。ソロリサイタルシリーズ「浅利真サクソフォン・ナイト」の開催や、第14,15,17,18回ワールドサクソフォン・コングレス出演など精力的に演奏活動を展開し海外での活動も多い。2015年1stソロCD「Vongole!」をリリース。編曲家としてサクソフォン・アンサンブルを中心多数の作品を手がける他、吹奏楽指揮者・トレーナーとして後進の指導にも当たっている。2018年、第24回日本管楽合奏コンテスト全国大会にて指揮をした練馬区立開進第二中学校吹奏楽部が最優秀賞を受賞した。サクソフォン8重奏団「ヴォンゴレーズ」主宰。21世紀の吹奏楽「響宴」会員。

Soprano sax 北井陽平
Alto sax 本間美桜
Tenor sax 平井千紘
Piano 織井香衣

チケット
一般 ¥3,000 学生¥2,500 税込・全席自由

予定プラグラム
Escualo, Decalisimo, Adios Nonino, Annees de Solitude, Libertango, Serie del Angel

チケットのご予約
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主催 アーク証券株式会社 ・ 紀尾井町サロンホール運営事務局(株式会社ミリウテラス)