紀尾井町サロンホール主催「木曜コンサート」をより皆様に楽しんでいただくための、インタビューシリーズ。演奏だけではわからない意外な素顔が垣間見えたり、より身近に感じられるようなお話をぜひお楽しみください。第14回目のインタビューは、9月9日の木曜コンサートにご出演いただく篠笛・神楽笛奏者の秋吉沙羅さんにご登場いただきました。

笛または篠笛を始められたきっかけについて、お聞かせいただけますか。

 私は広島出身なのですが、父が北広島町の「苅屋形(かりやかた)神楽団」に所属し、神楽をしていたのがきっかけです。毎週父の神楽の練習について行き、5歳くらいから笛をおもちゃ代わりに吹くようになりました。

その神楽団は、どのような活動をされているのでしょうか?

 神楽団では毎年秋に、神様に五穀豊穣の感謝を、舞や奏楽で「奉納」しています。全国各地に様々な種類の神楽が存在していますが、その中でも広島の神楽は衣装も舞も大変きらびやかで、見ているだけでとても面白い世界です。昨年は残念ながらコロナウイルスの関係で奉納ができなくて残念でしたが、ぜひ多くの方にご覧いただきたいものです。

神楽から現代音楽をやろうと思ったきっかけはどのようなことだったのでしょうか。

 私は父の影響で神楽を始めましたが、同じく幼少期から母の影響でピアノも始めました。習ったことを弾くだけではなく、自分で自由に作曲のようなことをしながら楽しんでピアノを弾いているような子どもでした。また当時から、母はオーケストラなどのコンサートにもよく連れて行ってくれました。ジャンルを越えた音楽や、様々な楽器とのコラボレーションをするようになったのは、私にとって自然なことだったと思います。

その後どのような活動をされていたのですか。

 実は子どもの頃から幼稚園教諭を目指していた私は、地元の安田女子短期大学保育科を卒業して、幼稚園教諭として3年間働いていました。学生時代から音楽活動を始めたのですが、幼稚園教諭時代も続けているうちに両立が難しくなってきました。そして幼稚園の先生を辞めて上京。最初の3年間は、廃品打楽器奏者の山口ともさんのアシスタントをしながら、開拓しました。

 山口ともさんからは、純粋に「音」を楽しむこと、音色の美しさの追求、音楽に対する自由な発想を学びました。今もそれはとても私の中に生きています。何とか独り立ちしてからは、国内だけではなく、海外での演奏のチャンスも増えて行きました。

日本や海外のミュージシャンやグループと数多くコラボレーション(または海外公演)されているとお聞きしておりますが、どのような方々でしょうか。

 はい。日本国内ですと、ももいろクローバーZ、T.M.Revolution、WANIMAなど様々な方々の演奏のお手伝いをさせていただきました。このほか、ゲーム音楽のSEKIROやMONSTER HUNTER RISEなど様々なレコーディングにも参加しています。

 海外公演の際には、現地の楽団とのコラボレーションをたくさん行ってきました。例えば、カタールでの演奏の際、現地の音階に合わせて指をかざして4分の1の半音を作ってコラボレーションしました。すごく面白い体験でした。また近年ではアメリカアリゾナで行われた「コンポーザーズチョイス」というイベントに作曲家と演奏家として招かれ、楽曲を発表したり演奏してきました。様々な音楽の出会いがあり、大変刺激的でした。

特に海外の方と和楽器のコラボレーションはいかがだったでしょうか。また、海外公演でお客様の反応はいかがでしたでしょうか。

 海外公演で様々な国を訪れた際、時々現地のジャズバーなどに足を運び、自分も挙手してステージに上げてもらい、飛び入り参加したことが何度かあります。特に面白かったのが、フランスパリの地下トンネルのような形の面白いライブハウスで飛び入りをした時のことです。キーを指定して、ブルースに挑戦しました。現地の皆さんにとって、篠笛はもちろん聞いたことのない音色です。私のソロがどんどんヒートアップして、最後はスタンディングで拍手をいただきました。全然知らないミュージシャンたちとのスリルある演奏もすごく楽しかったです。用意されたコンサートも楽しいものですが、自分から飛び込んでいく演奏もすごく面白いものです。

CDアルバムを拝見すると、ビジュアルにも凝っている?コンセプトがあるのだと思いますが、どのような発想から生まれているのでしょうか。

 発想はいつも自分が好きなものや興味があるところからやってきます。例えばファーストアルバムの「龍の目醒め」はその名の通り龍がテーマでした。アルバム制作前後の時期、様々な龍の関係する場所に導かれるように訪れることが多々ありました。自分で意図したわけではないのですが、会う人会う人、みんなが私を龍に関係する不思議な場所へと連れて行くんです(笑)。ジャケットやMVでは、私が龍そのものになってしまいました(笑)。3枚目のアルバム「Evolution」の時には、アルバムができる前に一つの物語「クーナと龍」が生まれました。これは絵本にもなりました。その世界観を音楽で表現したアルバムになりました。その時のジャケット衣装は、物語の中に出てくるクーナをイメージしたものです。

 また今年リリースした最新アルバム「忍-SHINOBI-」は思い切り忍者を意識して全てを作りこみました。以前から自分で伊賀まで忍者の勉強をしに行くなど、大変興味があったんです。知られざる忍者の生活や彼らの知識の奥深さについて学んだことも、音楽の中に取り入れてみました。これからも様々なことに興味を持ち、作品に落とし込んでいけたらいいなと思います。

今後チャレンジしたいことはありますか。

 このコロナ禍において、新しい活動をビジョンするのが正直難しいなと感じるこの頃です。でも、自宅で過ごすことが増えたおかげで、屋上菜園や免疫力を高める食事作りにも目覚め、新たな楽しみを見出すことができました。今後は音楽だけではなく、異次元のものとコラボレーションをしたり、自分自身が音楽以外の何か新たなスキルを身につけ、これまで見たことないユニークなミュージシャンというか、アーティストになってみたいなと思います。今は時間がいっぱいあるので、模索しながらゆっくりこれからのことを考えたいです。

今回の木曜コンサートで予定されている楽曲の構成はどのようなものになりますか。

 これまでに発表したオリジナル曲はもちろん、最近作った新しい曲も披露できたらと思っています。また、今回のテーマは大好きな「お月さま」なので、月にまつわる日本や外国の曲も演奏できたらと考えています。今回とても上品で素敵なホールなので、会場の雰囲気に合った曲選びをしているところです。どんな響きになるか、とても楽しみです!

その時に使われる笛の種類を教えてください。

 今度のコンサートでは、篠笛を主に使って演奏します。篠笛はドレミ音階になっている楽器で、キーによって、笛を持ち替えて演奏します。今度も何本も持ち替えて演奏しますので、そんなところも注目してみてください。楽器の長さや太さによって、笛の響きや音色が変化しますので、お楽しみいただけたら嬉しいです。また、初秋の季節、ぜひ神楽笛の音色もお聴かせしたいと思っています。きらびやかで勢いのある音色にご期待ください。

ご一緒に演奏されるメンバーの方をご紹介ください。

ギター 越田太郎丸さん
上京して間もない頃から、長年に渡ってサポートしてくださっている越田さん。これまでライブやテレビ出演など様々な現場でご一緒してきました。私の2枚目、3枚目のアルバムのレコーディングにもご参加くださりました。ブラジル音楽を軸に様々なジャンルの音楽を演奏される越田さん。思わず踊りたくなるような、軽快なギターの音色をどうぞお楽しみに!

ピアノ 杉浦秀明さん
杉浦さんとはここ数年一緒に演奏をさせていただいています。4枚目の最新アルバムのレコーディングでも共演。まだ30代に入ったばかりの若さでありますが、何を弾いても素晴らしいセンスで、その難しいフレーズはどこから飛び出してくるんじゃ?!と毎度びっくり!そして刺激をいただいています。今回も杉浦さんの超絶ソロにワクワクしています。

心待ちにされていらっしゃるお客様に(お越しいただくお客様に)メッセージをお願いいたします。

 今回、このクラシカルな美しいホールでの演奏が決まりとてもワクワクしています。ライブハウスでの演奏が多い私にとって、このような空間で生音を大切にしながら、一つ一つ音作りをしていくことは、新しい挑戦でもあり喜びです。当日は心を込めて演奏&トークをお届けしたいと思います。なかなか大変な世の中ではありますが、ぜひ生の音を浴びて元気と笑顔をお土産に持って帰っていただけたら嬉しいです。ぜひお待ちしております。

コンサート情報

アーク紀尾井町サロンホール主催シリーズ 木曜コンサート
三日月コンサート

出演:秋吉沙羅(篠笛、神楽笛)、越田太郎丸(ギター)、杉浦秀明(ピアノ)

2021年9月9日 木曜日 19:00開演(18:30開場)
前売5000円 当日5500円 税込・全席自由

チケットご予約(当日会場精算)
紀尾井町サロンホールオンライン予約(クリックでページ移動します)

■プロフィール
秋吉沙羅(篠笛、神楽笛奏者)
広島出身。 神楽団員である父親の影響で5歳から神楽笛を、19歳から篠笛を独学で始める。苅屋形神楽団所属。15歳で入団以来、県内各地での神楽競演大会樂の部にて数々の賞を受ける。神楽だけにとどまらず他ジャンルとの共演も多数。篠笛をメインとしたバンドで自ら作曲した音楽を展開。ライブでは心に染みる音色とアニメ声のMCが好評。 2013年CD 「龍の目醒め」2015年「謡-UTAI-」2016年「Evolution」2021年「忍-SHINOBI-」を全国リリース。伊勢神宮公式HP曲、夏川りみや二階堂和美等のCDアルバム、角川映画「源氏物語~千年の謎」劇中音楽、「SEKIRO」をはじめゲームやアニメ音楽の録音に参加。ももいろクローバーZ桃神祭、T.M.Revolution武道館ライブ、新日本プロレス、Japan Expo in Paris他、ヨーロッパ、中東、アフリカ、アメリカなど海外での演奏も多数。また作曲家として楽曲提供を行うほか、2019年アメリカアリゾナ州で行われたComposer’s Choiceに参加。2016年よりFM西東京「秋吉沙羅のGOOD NIGHT☆MONDAY」でパーソナリティを務める。2018年絵本「クーナと龍」出版。日本伝統芸能を背景に国内外で活動するアーティスト。 2019年「こと」から改名。

https://lit.link/sarahakiyoshi

主 催:アーク証券株式会社・紀尾井町サロンホール運営事務局