2015年4月王子ホール(東京)公演 ピアノは山田武彦さん ©王子ホール/撮影:藤本史昭
8月の木曜コンサートはメゾソプラノ歌手 波多野睦美さんとバンドネオン奏者の北村 聡さんのデュオコンサートです。映画のタイトルを彷彿させる美しい公演名〈8月のバンドネオン〉、波多野さんの陰影に富んだ豊かな声と言葉、バンドネオンが奏でる人間の感情のうねりを感じさせる旋律が交じり合ったときにどんなドラマが創り出されるのか楽しみです。おふたりに、ほんの少し質問を投げかけさせていただきました。コンサートのご案内としてお役立ていただければ幸いございます。(文中一部敬称略)
お二人の共演はいつから重ねてられるのですか?また、出逢いをお聞かせくださいませ。
波多野:王子ホールでの波多野のシリーズ《歌曲の変容》の2013年のリサイタル(ギターの大萩康司さんとのトリオ)からです。それ以前から北村さんのうわさを聞いていて(笑)ずっと興味がありました。ぜひ一度ご一緒したい!と思ってお声がけし、以来、ライヴでの北村さんの集中力や空気感に触発され続けています。
写真:2013年5月王子ホール(東京)公演 終演後 ギターの大萩康司さんと)
波多野さんはギター、リュート、ハープなどの弦楽器との共演の機会が多いですが、バンドネオンをパートナーに選ばれた理由、また、バンドネオンという楽器に惹かれる理由をお聞かせください。
波多野:これは生理的に音が好きだ、という一言に尽きるのですが、あえて言えば、《息の楽器》だと感じるからかも。バンドネオンに空気が入る時、抜けていく時、どちらもすごく人間的なんです。
北村さんにお聞きいたします。クラシック、ポップスなどボーダレスな活躍をなされる中、今回、波多野さんとご一緒されることにはどんな想いがありますか。また、バンドネオンの聴きどころ、演奏者としての楽器の一推しの魅力をお聞かせいただければ嬉しいです
北村:広く浅くの門外漢ですが…タンゴ以外にもいろんな音楽を体験したい気持ちは強いです。幸運な事にこれまで各ジャンル、各楽器のマエストロたちと共演させて頂きました。楽器を始めるには遅い大学生から取り組んだバンドネオン、この楽器のおかげ(奏者が少ない事もあり)で素晴らしい経験をさせてもらってます。その中でも波多野さんとの共演は毎回楽しみです。またとても光栄な事です。歌の呼吸と蛇腹の呼吸がシンクロして一体になれるよう、自分も心と楽器でうたっています。ややもすれば、自己の表現は?音は?という事に固執して音楽を征服してやろうという傾向に自分はあるのですが、言葉の持つ美しさや音楽そのものが自然に立ち現れる波多野さんの歌にいつも舞台上で感動しています。心の底から尊敬する音楽家です。
2018年6月東大寺本坊(奈良)公演
〈8月のバンドネオン〉公演のプログラムをお考えになられるとき、選曲でされる際に大切になさったことを教えてください。
波多野:いつも “その共演者と演奏したい曲” を第一に、そして、季節感を大事にして選んでます。俳句を始めて数年ですが、そのせいもあって以前よりもっと詩の季節感に敏感になりました。プログラムはコンセプトから出発することももちろんありますが、まず共演者ありき、が多いです。
最後に、「8月のバンドネオン」公演は〈ひと言〉で表現するならば、どんな言葉になりますか?できる範囲でよろしいです。
波多野:「熱のある氷」
北村:大変な時代を生きています。聴いてくださる皆様が一時、それぞれに何かを感じて頂き安らぎの時間になれば幸いです。
コンサート情報
アーク紀尾井町サロンホール主催シリーズ 木曜コンサート
8月のバンドネオン
2021年8月12日 木曜日 19:00開演
全自由席:前売一般4500円 学生2000円(25歳以下・要学生証) 完売御礼
チケットご予約 ◎ダウランド アンド カンパニイ
TEL.042-390-6430 https://dowland.info info@dowland.info
■プロフィール
波多野睦美 歌
英国ロンドンのトリニティ音楽大学声楽専攻科修了。シェイクスピア時代のリュートソングでデビューし、歌曲を中心にレパートリー、活躍の場を広げる。バッハ「マタイ受難曲」などの宗教作品、オラトリオのソリストとして鈴木雅明、寺神戸亮指揮の古楽オーケストラ等と共演。バロックオペラにおいても深い表現力で注目される。現代音楽では作曲家から厚い信頼を得て間宮芳生、高橋悠治、権代敦彦らの初演を含む作品を演奏。「名曲アルバム」「クラシック倶楽部」「題名のない音楽会」等に出演。CDは古楽器との共演作品の他、高橋悠治(作曲/ピアノ)ソングブック「ねむれない夜」、シューベルト「冬の旅」、栃尾克樹とのトリオによる「風ぐるま」、大萩康司(ギター)との「プラテーロとわたし」(朗読/歌)など多数。
北村 聡 バンドネオン
関西大学在学中にバンドネオンに出合い小松亮太、フリオ・パネに師事。世界各国のフェスティバルで演奏。これまでに鈴木大介、舘野泉、夏木マリ、EGO-WRAPPIN’、中島ノブユキ、東京交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団と共演。NHK「八重の桜」「青天を衝け」、映画「そこのみにて光輝く」「マスカレード・ホテル」をはじめ様々な録音に参加、繊細な表現には定評がある。喜多直毅クアルテット、ジャノタンゴ、三枝伸太郎Orquesta de la Esperanza、大柴拓カルテットなど数多くの楽団に参加、活動中。
■プログラム
私はマリア/もしもう一度(ピアソラ)アルフォンシーナと海(ラミレス)サンタマンの森(バルバラ)他
主催:アーク証券株式会社・紀尾井町サロンホール運営事務局
協力・お問合せ:ダウランド アンド カンパニイ