紀尾井町サロンホール主催「木曜コンサート」をより皆様に楽しんでいただくための、インタビューシリーズ。演奏だけではわからない意外な素顔が垣間見えたり、より身近に感じられるようなお話をぜひお楽しみください。Vol.012は7月29日の木曜コンサートにご出演いただくギタリストの秋田勇魚さんにご登場いただきました。

ギターをはじめられたきっかけについて、お聞かせ頂けますか?

祖父が趣味でジャズギターを弾いていたのですが、その影響でギターを習い始めることになりました。習い事で始めるのであればメソッドとして多種多様なテクニックを身につけていく「クラシックギター」がいいのでは、ということでクラシックギターを習い始めました。例えば「アルハンブラ宮殿の思い出」に使われているトレモロ奏法はクラシックギターでしか使われない弾き方で、その奏法に求められる高度な滑らかさは、幼い頃からの訓練が必要と言われています。

慶応義塾大学在学中にパリへ留学されたとお聞き致しました。音楽大学ではなく、一般大学へ進学されたのは、音楽以外へのご興味も大きかったのでしょうか?

音楽に対する興味と同じくらい他の分野への興味がありました。音大ではなく一般大学で各専門分野や考え方が全く違う人達のいる環境に身を置いて、一人の人間として引き出しを充実させたいと思いました。大学では既に起業している学生がいたり、社会に対して問題意識を持っていてそれを解決しようとクリエイティブな活動をしている人がいて、そういったアクティブな人達との繋がりはとても刺激的でした。僕はフランス詩を暗唱することが好きで、歴史や文学など様々な文化的側面を知ることで音楽もより立体的に血の通ったものに感じます。フランス詩の独特の響きや精神性は音楽にも強い繋がりがあると思い、いち早く文化に触れたくてパリ留学を決めました。

音楽の道を本格的に志すとお決めになられた出来事や、お気持ちの変化などおありでしたら、教えて頂けますか?

周りが就活を始めた時に、自分自身を振り返り、僕が人生で経験してきた素敵な体験は、ギターや音楽がつないでくれたものだと気づきました。それまで頭の中にぼんやりとあった「就活」という言葉はなくなり、本場の感覚を取り入れるという意味で「ギターでフランスに行きたい」という意識が徐々に浮かんできたのです。

パリでの留学生活の中で特に思い出深いエピソードなどおありでしたら、教えて頂けますか?

留学していた時に始めた「旅ギター」という企画があります。フランスをはじめヨーロッパの国々を旅行し、旅先の街や自然の中で演奏した動画を撮っていました。どこでも、気に入った場所で演奏できるのはギターの特権で、本当に自由な気持ちで自然と対話しながら演奏している気分でした。20以上の街で撮った動画はとてもいい思い出で、YouTubeチャンネルなどでも好評いただいています!今後も活動の一つとして取り組んでいきたいと思っています。

これから先、演奏家としてもしくはプライベートでチャレンジされたい事などおありですか?

ギタリストの一つの目標としてギターコンチェルトをチャレンジしたいと思っています。ギターのコンチェルトというとアランフェスが演奏されがちですが、アーノルドやアンドレ・プレヴィン、ヴィラ=ロボスの書いたギターコンチェルトもあり、日本で演奏される機会を作りたいと思っています。また、クラシックギターと他の楽器とを実験的にコラボレーションする企画も始めており、これからも様々な楽器とアンサンブルしていくのが楽しみです。クラシックの楽器、アーティスト以外にも、ジャズや邦楽など他ジャンルのアーティスト、さらには、映像やフラワーアレンジメントなどともコラボレーションして行きたいと思っています。

最後に今回のコンサートで予定されている楽曲について、又、心待ちにされていらっしゃるお客様へメッセージをお願いいたします。

ギターの「生の音」をもっと身近に感じていただけるようにフラットなステージで、さらに皆さまに「音楽の世界」に没入していただくための仕掛けを考えております。ライティングや映像を投影することで、音楽の世界観をより豊かに表現していきます。1部はバッハから古典派、ロマン派までの曲を演奏します。「ハンガリー幻想曲」は前半の厳粛な雰囲気と後半の溌剌として軽快な舞曲の対比が心地よい対比になっています。2部は南米の曲を並べていて、カリブ海やアマゾンの森林を想い起こさせるようなメロディーをお楽しみいただけますと幸いです。

コンサート情報

アーク紀尾井町サロンホール主催シリーズ 木曜コンサート
L’atelier ISANA Lumières -光-

2021年7月29日 木曜日 19:00(18:30開場)
チケット 3,000円

チケットご予約 紀尾井町サロンホールオンライン予約(クリックで予約ページに飛びます)  完売御礼

秋田勇魚(ギター)
1994年生まれ。アルビ国際ギターコンクール優勝、イーストエンド国際ギターコンクール第2位及び聴衆賞受賞など国内外で受賞を重ねる。2017年-20年慶應義塾大学を休学し、活動拠点をフランスに移しパリ地方音楽院にてG.アビトンに師事。若手ギタリストの登竜門「旬のギタリストを聴く~Hakujuギター・フェスタ2019」、「ヤマハホール10周年記念Acoustic Guitar Festival Special Concert Vol.1」に出演し、満員の会場にて好評を博す。L’atelier ISANA(勇魚のアトリエ)と題して、クラシック・ギターの音楽表現の可能性を追求するコンサートシリーズをスタート。コミュニケーションアプリで毎朝音楽が届くMorning Routine Musicを実施中。日本コロムビアOpus Oneレーベルよりデビューアルバム「AQUARELLE」をリリースし、レコード芸術の特選盤に選定される。繊細でしとやかに奏でる秋田の音楽は、聴く者の心を音の世界へと誘い、クラシック・ギター界にとどまらず、ジャンルの垣根を超えた音楽での活躍も期待される新星である。