紀尾井町サロンホール主催「木曜コンサート」をより皆様に楽しんでいただくための、インタビューシリーズ。演奏だけではわからない意外な素顔が垣間見えたり、より身近に感じられるようなお話をぜひお楽しみください。Vol.010は6月10日の木曜コンサートにご出演いただくel cielo 2020の皆様にご登場いただきました。

ピアソラ作品を演奏するスペシャリスト集団〈el cielo2020〉が発足した成り立ちを教えてください。

ヴァイオリニストの桜井大士とプロデューサーである森が、「とにかく激しく、情熱的な音楽を作りたい(奏でる)」というテーマで、2015年にクラシック系のバンドを結成。ある意味、今は絶滅危惧種のハード系のロックな「超硬派系バンド」を作るイメージ。

メンバーは、それまで桜井と一緒に活動し音楽性がうまく合っていて、美しい音色を持ちながらも音楽に躍動感を与えることができるピアニストである高木梢が加わりました。ベーシストはクラシック系の奏者で数名試されたが、目指す分厚いサウンドのイメージには遠く、発想を一転し、森が信頼するジャズ界の実力派ベーシストとして活躍している金森基に声をかけ、チェリストは数度の交代を経て、最終的に橋本專史でぴったりハマりました。チェリストは変幻自在、うまく空間を演出できなければならないので、それをできる人はとても希少なので、上手い、だけでなく、印象的なプレイ(ファインプレイができる)ができるメンバーが揃ったとの言葉もいただきました。

結成当初はオリジナル曲もやっていましたが、いつの間にはピアソラのみになっていた。ピアソラをやると、他の曲がかすんでしまい、ライブ全体のバランスが悪いのもひとつの理由。今でもオプションで、またトリオ編成でやる時など、ピアソラ以外の曲も演奏することもあります。

ピアソラの楽曲に欠かせないバンドネオンを含まない弦楽四重奏の楽器構成は珍しいと思うのですが、その挑戦はどのように行われましたか。また、編曲にあたって どのような工夫や試みをされましたでしょうか。

最初の時点で、追求する音楽に、激しさ、新しさ、スタイリッシュさ、をイメージしていたので、バンドネオンは無しと決まっていました。どちらにしても、バンドネオン奏者は少なく、イメージがハマる奏者がいないこともありますが、一番大きい理由は、ピアソラを「作曲家」としてとらえ(ある意味、クラシック系の考え方)、世の中に新しいピアソラ、真のピアソラを提示したかった。「ピアソラは何のジャンルか、タンゴなのかそうでないのか」、そんな話がよくされてますが、我々は一言でいうなら、ピアソラという新たなジャンルだと思っています。

クラシック系の奏者はピアソラをよく演奏しますが(演奏する曲はある程度限られますが)、ピアソラの音楽はピアソラ自身の演奏が残っているので、それと比べるとどうしても迫力不足、質量不足になってしまう。そうならないようにするのが重要なポイント。ピアソラ音楽最大の魅力である、激しさ、迫力、濃厚さを保ちつつ、カッコよく、新しく、スタイリッシュであるということを加えていくのが編曲でも重要なテーマ。原曲(基本5人編成の楽譜)を一度解体し、いらない部分を削ぎ落し、場合によっては新しい要素を加え、4人に再分配する、という作業。そこから、奏者それぞれの閃きやアドリブなども加わり、形が変わっていきました。

今年3月のオペラシティのコンサートの演奏も素晴らしかったです。4つの楽器の響きのうねりが会場いっぱいに満ちていましたが、アンサンブルで心がけている点などはありますでしょうか。

一般的にアンサンブルはバランスが大事ですが、そこはあえてあまり考えないようにしている。(という心づもりでいくという意味)とにかくメンバー個々が、熱量たっぷり、激しさ、美しさ、というのを徹底的に追及。ボーカルバンドのようにメインとサブではなく、全員が主役でありサポートにもなっています。

それぞれのメンバー様におたずねします。「あなたにとってピアソラとは?」

金森・・・魂と五感を震わせる、激しくも美しいソウルミュージック
桜井・・・自らの内面に共鳴し、それを表現させてくれる存在。
橋本・・・先輩!
高木・・・私の音楽人生にとって欠かせない存在

音楽から離れますが、メンバーの皆様のそれぞれの素顔に迫りたいと思います。

①  音楽以外で今一番興味のあること、楽しんでいることはありますか?

金森・・・ゴルフ
桜井・・・建築、ミニカー、シャーロックホームズ
橋本・・・船釣り。毎朝7時頃に全国の釣果速報をTwitterでチェックしています。エルシエロのライブの後は必ず釣りに行くと決めています。「泳がせ釣り」が好きです。
高木・・・日本酒。昨年から日本酒に目覚め、20種類くらい飲んだと思いますが、詳しくは無いです。ただの飲兵衛ですね。いつか酒蔵巡りをしたいです。

② プライベート、演奏活動に関わらず、今後チャレンジしてみたいことはありましたら教えてください。

金森・・・スカイダイビング
桜井・・・音楽を表現する私は、皆さんに観ていただくことでのみ、生きられる人間です。音楽をいかに楽しんでもらえるか、毎日がチャレンジです。
橋本・・・たくさんあります。シロハラインコという南米の中型インコがいるのですが、挙動がとても面白いんです。それを多くの人に知ってもらうために土地を買って繁殖に挑戦したい。
高木・・・エルシエロでブエノスアイレスに行ってライブをする! ひそかに抱いてる夢は、、海のキレイな離島に行って島の子供たちにピアノを教えたいな。

最後に、紀尾井町サロンホール木曜コンサートにご出演いただくにあたり、お越しいただく方にメッセージをお願いします。

この時世だからこそ、世の中は音楽を求めていると思います。情熱ほとばしるサウンド、涙なしには聴けない美しいメロディ……。エルシエロのライブが初めて、という方々にぜひ一度聴いて欲しいですね。(ライブ前の)緊張からの(ライブ始まってからの)解放、ワクワクやドキドキを感じて欲しいです。

メンバープロフィール

 

桜井 大士  Taishi Sakurai – Violin
悪魔的とも評される超絶技巧と官能的な旋律で魅了する。エルシエロの特徴である“熱量”と“切れ味”は彼のヴァイオリンによって唯一成り立つものであり、まさにエルシエロの「顔」と言える。ヴィヴァルディ「ヴァイオリン協奏曲“四季”全曲」、J.S.バッハ「無伴奏ヴァイオリン全曲」等、これまでに4枚のCDをリリース。東京藝術大学音楽学部ヴァイオリン専攻卒業、同大学大学院修了。埼玉県生まれ。

金森 基  Motoi Kanamori – Bass
強烈なビートと重厚なサウンドを刻む、エルシエロの「心臓」。寺久保エレナ、Red Holloway、Vincent Herring、Eric Alexander等、著名ジャズ奏者との国内外ツアーやレコーデイングで共演する、ジャズ界きっての実力派ベーシスト。2018年と2020年に発売された自己トリオによるCDはきわめて高い評価を受けている。アメリカの高校~国立群馬大学を経て、東京工業大学大学院卒業。京都府出身。

橋本 專史  Atsushi Hashimoto – Cello
作曲や編曲などもこなす、高い次元のオールラウンドプレイヤー。2020年1月にエルシエロのチェリストに抜擢。天性のバランス感覚と調整能力を持ち、エルシエロ・サウンドの最後の砦として、循環と躍動を与える「血液」的な役割を担う。東京藝術大学音楽学部チェロ専攻卒業後、ハンガリーのリスト音楽院で学ぶ。修了後はハンガリー国立歌劇場に所属し、欧州各地で多数の経験を積む。愛知県出身。

高木 梢  Kozue Takagi – Piano
研ぎ澄まされた感性から放たれる “限りなく透明な美音”を持つピアニスト。ピアソラ音楽の「手足」を担っているともいえる“ピアノ”の要素を最大限に引き出し、エルシエロの最大の特徴である“熱量”、そして閃きを演出する。これまでにソロアルバム「EBB TIDE」(引き潮)を含む2枚のCDをリリース。東京音楽大学ピアノ演奏家コース卒業。東京学芸大学大学院修了。宮崎県出身。

el cielo 2020オフィシャルサイト https://www.mori-music.com/elcielo2020/
プロモーションビデオ https://youtu.be/9UdN-Eyrl1o

リリース情報

デビューアルバム『El Cielo 2020 ASTOR PIAZZOLLA』
超絶技巧と灼熱のサウンドを放つ、ピアソラ専門のクラシックバンド

タンゴではなく、クラシックでもなく、ジャズやロックでもない。様々な音楽を融合し、進化させた、今やひとつのジャンルともいうべき“アストル・ピアソラ”の世界。ピアソラの正統な流れをくみつつも、バンドネオンを廃した新しいスタイルで、極めて高い熱量を持ったサウンドが特徴である。「ブエノスアイレスの四季」全四曲、「リベルタンゴ」や「アディオス・ノニーノ」といった代表曲の他、「悪魔のロマンス」や「ミルトンの肖像」などのエルシエロ独自のアプローチが際立つ作品など、計13 曲を収録。ジャケットの絵は伊豫田晃一氏、製作チームは日本最高のエンジニアによるもの。ライブの熱さ、音楽そのものの激しさを存分に詰め込んだ、渾身のアルバム。

「背筋の伸びたロマンティックな音に魅せられた」-織田哲郎
「エルシエロの演奏はピアソラ音楽の官能性と強烈なグルーヴを見事に三本の弦楽器とピアノという編成で現前させているのだ」-ジャズ批評より

【収録曲】
1、エスクアロ(鮫)
2、リベルタンゴ
3、ブエノスアイレスの秋
4、天使のミロンガ
5、天使の死
6、ブエノスアイレスの冬
7、オブリヴィオン(忘却)
8、ミルトンの肖像
9、ミケランジェロ 70
10、ブエノスアイレスの春
11、ブエノスアイレスの夏
12、悪魔のロマンス
13、アディオス・ノニーノ

CD詳細
https://www.mori-music.com/elcielo2020/discography/

コンサート情報

アーク紀尾井町サロンホール主催シリーズ 木曜コンサート
El Cielo 2020 情熱的挑発LIVE

バイオリン 桜井大士
チェロ 橋本専史
コントラバス 金森基
ピアノ 高木梢

日時 2021年6月10日 木曜日 開場18:30 開演19:00
料金 前売¥4,500 当日¥5,000 税込・全席自由

ご予約方法
紀尾井町サロンホールオンライン予約 https://forms.gle/v2X6BwXEMtyZtAKn9
*当日会場での現金精算となります

El Cielo 2020 オフィシャルサイト
https://www.mori-music.com/elcielo2020/

お問合せ先 紀尾井町サロンホール https://kioichosalonhall.com/
主催 アーク証券株式会社 ・ 紀尾井町サロンホール運営事務局